掲載期間:2016年2月15日~3月14日

第88回2016年アカデミー賞

インタビュー今年、通算9度目の作品賞ノミネートとなったスピルバーグ監督。雑誌やCM、ドラマ、映画と活躍する広瀬すずさん。二人のアカデミー賞への想いを語ってもらいました。

スティーヴン・スピルバーグさん

巨匠スピルバーグが語るアカデミー賞の忘れがたい思い出

『ブリッジ・オブ・スパイ』が、第88回アカデミー賞の作品賞、助演男優賞、脚本賞など6部門でノミネートされたスティーヴン・スピルバーグ。これまでに7回監督賞にノミネートされ、『シンドラーのリスト』(1993)と『プライベート・ライアン』(1998)で受賞。プロデューサーとして作品賞にノミネートされたのは本作が9度目で、『シンドラーのリスト』で受賞したほか、1987年には特別賞のアービング・サルバーグ記念賞も受賞している。新作を完成するたびに賞レースを沸かせる巨匠が、『ブリッジ・オブ・スパイ』の裏話やアカデミー賞にまつわる忘れがたい思い出を語った。

スティーヴン・スピルバーグ
アカデミー賞最大のメリットとは

監督賞受賞作は、2本とも第二次世界大戦が舞台であり、『戦火の馬』(2011)や『リンカーン』(2012)、そして最新作『ブリッジ・オブ・スパイ』と、歴史ものが続いているように、スピルバーグは大の歴史好き。題材的に、歴史ものが賞レースに絡みやすいのは、それだけ面白い題材が歴史には埋まっているということだろう。もちろん、ハリウッドで最も尊敬されているスピルバーグならではの、卓越した手腕があってこそだ。「年末から年始にかけて、アカデミー賞のノミネーションから授賞式が行われるまで、映画業界の仲間たちが、お気に入りの演技やお気に入りの映画はこれだと讃えるんだ。それ以上に素晴らしいご褒美はないよ」。

クロサワに名誉賞を授与したときのことは忘れられない

彼が出席した数多くの授賞式の中で、最も印象的だったのは、『シンドラーのリスト』で(作品賞と監督賞を)受賞したときと、黒澤明監督に名誉賞を授与したときだという。「僕が初めて『シンドラーのリスト』で受賞したときのことが最も印象に残っている。あの思い出は、これからも決して忘れることはないと思う。それから、覚えているかい? ジョージ・ルーカスと僕が、(1990年に)クロサワ(黒澤明)にアカデミー賞名誉賞を渡したんだ。クロサワに舞台に上がってもらって、賞を授与することが出来るなんて、ジョージと僕にとってすごく光栄なことだったよ」と、となつかしそうに振り返った。

スティーヴン・スピルバーグ
ウイットとユーモアたっぷりのコーエン兄弟の脚本

『ブリッジ・オブ・スパイ』は、米ソ冷戦時代を舞台に、保険分野の弁護士ジェームズ・ドノヴァンが、弁護を担当したソ連のスパイと、ソ連で逮捕されたU-2偵察機のアメリカ人パイロットの交換を交渉する、という実話に基づいたサスペンス。冷戦の真っ只中に子供時代を送ったスピルバーグは、イギリス人劇作家マット・シャルマンが企画を売り込んでいるのを聞いて、すぐに監督することを決めたという。シャルマンとジョエル&イーサン・コーエン兄弟がアカデミー賞脚本賞にノミネートされているが、特にドノヴァンとソ連のスパイ、アドルフ・アベルとのやりとりが絶妙だ。「マットは入念なリサーチに基づいて、素晴らしい第1稿を書き上げ、それをコーエン兄弟に書き直してもらった。彼らはウイットとユーモア、たくさんの皮肉を入れ込んだ。全てのキャラクターを深く掘り下げて、とても説得力あるものにしてくれたよ」とアカデミー賞で脚本賞&脚色賞を獲得しているコーエン兄弟の腕を賞賛する。さらに、「判例法や憲法についての映画にしたくなかった。必死で正しいことをしようとする二人の男についての作品にしたかったんだ。どれだけキャラクターに、どれだけ判例に重点を置くのか、そのバランスを取るのが、僕とコーエン兄弟が直面した最大のチャレンジだった」と続ける。

長年のパートナー、ハンクスとオスカー初ノミネートのライランス

ドノヴァンを演じたのは、主演男優賞候補になった『プライベート・ライアン』をはじめ、スピルバーグと4度目のタッグを組んだトム・ハンクス。普通の男性が、持ち前の正義感で、非常に危険な駆け引きを成功させるさまを見事に演じている。「トムはすごく古い友だちだから、あまり話さなくてもすぐに通じ合える。今回は、トムと一緒に仕事をした中でも最高の経験だった。なぜなら、彼には、これまでに一緒に組んだ3本の映画のどれよりも、演技力が要求されたからだ。本当に彼は全てを注ぎ込んで演じたと思うよ」と長年のパートナーを褒め称えた。
 そして、ドノヴァンとの間に不思議な友情が芽生えるアベルを演じ、助演男優賞に初ノミネートされたのが、イギリスの舞台俳優マーク・ライランスだ。「トムとマークは、いいチームで、とても奇妙なカップルなんだ(笑)。それが、たくさんのユーモアと悲哀を生み出してくれたよ」とスピルバーグ。いわゆるスパイのイメージとは正反対の、地味でぱっとしない男を、マークはリアルに、ひょうひょうと演じている。「マークは、物静かで、堂々とした兵士というアベルのキャラクターが大好きだった。彼は平然としていて、刑罰を逃れようとしなかったし、いかなる情報も決してCIAに渡さなかった。たとえ二重スパイになれば免責されると言われてもね。マークの演技の素晴らしいところは、完全なまでに静かなことだ。彼はすごく無口なんだ。でも、彼の目の奥で、すごく多くのことが起きているんだよ」と大絶賛。よほどマークの演技を気に入ったようで、次回作『The BFG(原題)』にも彼を起用している。

スティーヴン・スピルバーグ
最大の魅力は、今の時代に通じるテーマ

予想通り作品賞にノミネートされた本作で描かれるのは過去の出来事だが、今の時代に大いに通じるところが最大の魅力となっている。「ベルリンで壁が作られたり、偵察機U-2がソ連をスパイしたり、当時世界で起きていたことと、今日(移民が入ってこられないように)壁が作られたり、ソーシャルメディアやインターネットがお互いをスパイしあう機会を作っていることにはすごく関連性がある。今ほど多くのスパイ活動が行われていることはないからね。僕は、『全ての人間は、法律の下、平等な裁判を受ける権利がある』というドノヴァンの道徳的な信念が素晴らしいと思ったから、この映画を作ったんだよ」。

取材・文:吉川優子

(C) Armando Gallo / Corbis / amanaimages (C) Twentieth Century Fox Film Corporation and DreamWorks II Distribution Co., LLC. Not for sale or duplication.


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スティーヴン・スピルバーグ
1946年12月18日、アメリカ・オハイオ州シンシナティ生まれ。25歳のときに撮り上げた『激突!』(1971)で高い評価を受け、『JAWS/ジョーズ』(1975)が大ヒット。以来、『E.T.』(1982)、『インディ・ジョーンズ』シリーズ(1981・1984・1989・2008)、『ジュラシック・パーク』(1993)などヒット作を連発。ホロコーストを題材にした『シンドラーのリスト』(1993)で初のアカデミー賞監督賞を受賞した。近年は「フォーリング スカイズ」「エクスタント」「アンダー・ザ・ドーム」シリーズなどの製作総指揮を務め、テレビドラマでも精力的に活動している。

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『ターミナル』以来のタッグとなる、スティーヴン・スピルバーグ監督と名優トム・ハンクスによるサスペンス大作。東西冷戦下の1960年に実際に起きた、ソ連によるアメリカ偵察機撃墜事件“U-2撃墜事件”の舞台裏に迫る。『ノーカントリー』で第80回アカデミー賞監督賞を受賞したジョエル&イーサン・コーエンが脚本を担当。一介の弁護士が挑む実現不可能と思われた作戦で、思いがけないアプローチを試みる姿に意表を突かれる。

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