
今年の見どころ
ニコルソン、デ・ニーロ、パチーノ…桐谷健太、駆け出し時代に憧れた映画スターを語る
映画『彼らが本気で編むときは、』で、生田斗真演じるトランスジェンダーの女性と暮らす心優しき恋人を好演した桐谷健太。CMキャラクターや歌手としても人気を博し、多忙を極める彼が、「最近、映画をじっくり観る時間がなくて……」と前置きしながらも、今年のアカデミー賞候補で気になる作品や、駆け出し時代を支えた名作や俳優について雄弁に語った。

『ムーンライト』のビジュアルに興味津々
映画を観る際、情報源のほとんどは「友人や知人、あるいは、その日出会った人たちからの口コミ」だという桐谷。先日発表された第89回アカデミー賞ノミネート作品を挙げると、身を乗り出しながら「どれがお薦めですか? 逆に教えてほしい」と目を輝かせ、瞬間的に挙げたのがブラッド・ピットが製作総指揮に名を連ねる話題作『ムーンライト』だった。理由を聞いてみると、「ビジュアルにインパクトがありますよね、ものすごく気になる」とのこと。同作は、麻薬中毒の母親に育てられた黒人少年の苦悩と成長を描く人間ドラマ。少年から青年、中年へと変わる3つの顔を3色に分けたビジュアルは、未見の桐谷をもくぎづけにするほど、一人の人間の劇的半生を見事に表現している。

『アメリカン・ビューティー』はツッコミどころ満載!?
近年、多忙のあまり「映画をちゃんと観られていない」と嘆く桐谷。だが、過去の受賞作に遡ると、水を得た魚のように語り出す。中でも第72回に作品賞など5部門で受賞した『アメリカン・ビューティー』(1999)は大のお気に入りのようで、「ツッコミどころ満載で笑えますよね。(主人公が)アホなことをすごく真面目にやっているところも面白い」とニヤリ。「袋が風に舞うシーン(劇中に挿入されるイメージ映像)も印象的」と述懐する。さらに第87回で作品賞など4冠に輝いた『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)にも「あれだけ(落ち目の俳優が空想の世界で空を飛んだり、ビルが破壊されたり)ぶっ飛んだ描写があるのに、バスローブがドアにはさまっただけで慌てふためく、あのギャップが面白い」と笑みがこぼれる。
好きな映画はヘビロテ!『カッコーの巣の上で』は鉄板
映画を数多く網羅するというよりは、好きな映画を繰り返し観るという桐谷。特に1970年代の作品が好みのようで、「『カッコーの巣の上で』(1975・第48回作品賞、主演男優賞、主演女優賞など5部門受賞)は大好きです。『ゴッドファーザー』(1972・第45回作品賞、主演男優賞、脚色賞受賞)も何回も観ました」と名作を挙げる。さらに桐谷は、「東京に出てきて演技のレッスンを受けていた駆け出し時代、ジャック・ニコルソンやロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノなど、オスカー俳優たちの映画も勉強になりました。表現の文化が違うので芝居を盗むことはなかったですが、ハートの部分はすごく刺激になりました」と真摯(しんし)に語った。

生田斗真と2人で遊歩道を歩いた時間が作品に生きた
そんな駆け出し時代に養った役者魂は、おそらく桐谷の俳優人生の糧となっているはずだが、最新作『彼らが本気で編むときは、』では、トランスジェンダーの女性リンコ(生田)と愛を育む純朴な青年マキオを自然体で演じている。「クランクイン前にみんなでごはんを食べに行ったんですが、そのあと、何となく斗真と二人きりで遊歩道を2時間歩いて、いろんな話をしたんです。あの何気ない時間が現場で生きたかなと。恋人同士が共有する特別な空気感を出せたと思う」と自信をのぞかせる。さらに、「今回の役は斗真も大変だったと思います。彼の心が折れたらこの映画は終わりだと思ったので、ずっとそばで『かわいいよ』って言い続けました。演じているうちに彼も自信をもてるようになったのか、どんどんきれいになっていきましたよね」とうれしそうに目を細めていた。
取材・文:坂田正樹 写真:中村好伸

桐谷健太
1980年2月4日、大阪府生まれ。2002年、テレビ朝日系ドラマ「九龍で会いましょう」で俳優デビューし、続く2003年、『ゲロッパ!』で映画初出演。以降、TBS系ドラマ「ROOKIES ルーキーズ」(2008)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(2010)、映画『オカンの嫁入り』(2010)などで頭角を現し、2011年にはエランドール賞新人賞、2013年には映画『アウトレイジ ビヨンド』で第22回東京スポーツ映画大賞男優賞を受賞。近年も映画『くちびるに歌を』(2014)、『バクマン。』(2015)、『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』(2016)など話題作に次々と出演し、auのCM「三太郎シリーズ」では浦島太郎を演じ大人気を博し、CMのオリジナル楽曲「海の声」はミリオンセールスを達成。同曲で第67回NHK紅白歌合戦に初出場を果たした。2016年9月にはアルバム「香音-KANON-」をリリースした。
最新作
『彼らが本気で編むときは、』(2017年2月25日公開)
『かもめ食堂』『めがね』などの荻上直子監督が手掛けたオリジナル脚本の人間ドラマ。母親が失踪してしまった少女が叔父とその恋人に出会い、共同生活をするさまを描く。女性として人生を歩もうとするトランスジェンダーの主人公リンコ役に生田斗真、その恋人マキオ役に桐谷健太、母親に置き去りにされたトモ役に子役の柿原りんか。彼らを取り巻く人々を、ミムラ、田中美佐子、小池栄子、りりィ、門脇麦が演じている。
今年の見どころ一覧
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- アカデミー賞受賞作の公開日とあらすじをまとめてチェック!
- 今年のアカデミー賞はハプニングばかりが目立ちましたが 日本でも話題になりそうな作品が数多く受賞しました。 作品賞を受賞した「ムーンライト」の公開日、ストーリーや、 歌曲賞を受賞した「ラ・ラ・ランド」の動画など、気になる話題をまとめてお届けします!
文:Yahoo!映画
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- アカデミー賞を振り返り!今年は珍事件が多く大混乱な年に
- デイミアン・チャゼル監督の「ラ・ラ・ランド」が圧勝かと言われていましたが、 いざ結果をみると人種差別やいじめ問題などをテーマにした「ムーンライト」が作品賞を受賞しました。 作品賞発表では、まさかの封筒間違いで読み間違えるという前代未聞の事件も。
文:Yahoo!映画
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- 『スター・トレック』のエイリアン56体に対抗するスウェーデン映画の驚くべき老けメイク
- 第89回アカデミー賞メイク・ヘアスタイリング賞の候補者たちが、ビバリーヒルズにあるAMPASの本部で開催されたトークイベントに登壇。今年は『スター・トレック BEYOND』『スーサイド・スクワッド』『幸せなひとりぼっち』の3作品のヘア&メイクのアーティストたちが参加した。
撮影・取材・文:細谷佳史
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- 宮崎駿監督新作長編企画も発表!『レッドタートル ある島の物語』鈴木敏夫Pに直撃
- 今年は、どの作品が受賞してもおかしくないほど質の高い作品がそろったが、『レッドタートル』がノミネーションに入った理由について、「今アニメーション映画もどんどん派手になりつつあるんです。」と語った。
取材・文:細谷佳史、吉川優子 撮影:細谷佳史
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- 映画フリークの中条あやみ、ライアン・ゴズリングにくびったけ!
- 今年最も期待される女優の一人である中条あやみ。映画鑑賞が大好きで、ミニシアターや名画座などにも足繁く通うという彼女が、今年のアカデミー賞レースで最も気になる作品や、記憶に残る過去の受賞作について語った。
取材・文:坂田正樹
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- ニコルソン、デ・ニーロ、パチーノ…桐谷健太、駆け出し時代に憧れた映画スターを語る
- 映画『彼らが本気で編むときは、』で、生田斗真演じるトランスジェンダーの女性と暮らす心優しき恋人を好演した桐谷健太。CMキャラクターや歌手としても人気を博し、多忙を極める彼が、「最近、映画をじっくり観る時間がなくて……」と前置きしながらも、今年のアカデミー賞候補で気になる作品や、駆け出し時代を支えた名作や俳優について雄弁に語った。
取材・文:坂田正樹 写真:中村好伸
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- アカデミー賞最有力作の監督&主演コンビがそろって来日!
- 第89回アカデミー賞で、『タイタニック』(1997)に並ぶ歴代最多タイの14ノミネートという快挙を成し遂げたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』。『ハーフ・ネルソン(原題) / Half Nelson』(2006)以来のアカデミー賞主演男優賞ノミネートとなった俳優のライアン・ゴズリングと、長編監督作3作目にしてオスカー有力候補作とされる『ラ・ラ・ランド』を完成させたデイミアン・チャゼル監督が、今回のノミネーションを振り返りつつ、本ミュージカルについて語った。
取材・文:シネマトゥデイ編集部 石神恵美子 撮影:日吉永遠
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- 『君の名は。』が落選し、『レッドタートル』が候補になったワケ
- 国内外でも評価が高く、今年の長編アニメ映画賞に期待されていた新海誠監督の『君の名は。』が落選して『レッドタートル』だった理由とは?
文:神武団四郎
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- 受賞歴8回!圧倒的な強さを見せるピクサー作品
- 第61回(1988年)に受賞した『ティン・トイ』(日本未公開)から短編アニメ部門の常連だったが、長編アニメ部門でも第76回(2003年)受賞の『ファインディング・ニモ』以降、8回もオスカーに輝いている。
文:神武団四郎
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- 主人公はほとんど人間以外
- 長編アニメ賞作品は、ノミネートを含め動物やロボットなど人間以外を主人公にした作品が多いのはなぜ?
文:神武団四郎
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- なぜフランスのアニメは受賞できない?
- アニメが盛んなヨーロッパでも指折りのアニメ大国フランス。これまでも『ベルヴィル・ランデブー』(2002)や『パリ猫ディノの夜』(2010)、『イリュージョニスト』(2010)など、日本でも話題を呼んだ作品がノミネートされてきたのに受賞できない理由とは
文:神武団四郎