掲載期間:2020年1月14日~3月8日

第92回2020年アカデミー賞特集

アカデミー賞6部門ノミネートの快挙 韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が評価された理由

1月13日に発表された第92回アカデミー賞のノミネートは、ほぼ予想どおりの結果となったが、予想以上にノミネートが多かった作品を挙げるとしたら、『パラサイト 半地下の家族』ではないか。韓国映画としてはもちろん、アジア映画として初めて作品賞にノミネートされたのをはじめ、監督賞、脚本賞、美術賞、編集賞、国際長編映画賞(旧・外国語映画賞。※以下の表記も新たな名称で統一)の6部門でノミネートという快挙を達成。昨年のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞以来、作品の面白さは世界に知れ渡っていたので、この結果はある程度、順当ともいえる。しかし、外国語作品というのは今でもハリウッドでは圧倒的なマイノリティーであり、その逆風を軽々とはね返す、ポン・ジュノ監督の偉業には心から拍手を贈りたい。

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国際長編映画賞は受賞確実、作品賞受賞の夢も

アカデミー賞の歴史を振り返ると、そもそも国際長編映画賞に韓国映画がノミネートされるのは、この『パラサイト 半地下の家族』が初めてとなる。そして今回、この部門での受賞は、ほぼ確実の位置につけている。昨年もメキシコ・アメリカ合作(スペイン語)の『ROMA/ローマ』が国際長編映画賞と作品賞でダブルノミネートされ、国際長編映画賞を受賞した。作品賞にも絡んだことが、受賞の後押しになったのは間違いない。『パラサイト 半地下の家族』と同じく、カンヌのパルムドールを経てアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた昨年の『万引き家族』は作品賞ノミネートには届かず、『ROMA/ローマ』という強力なライバルがいたので受賞は逃した。『万引き家族』は国際長編映画賞以外にはノミネートがなかったことを考えると、今年の『パラサイト 半地下の家族』の6部門は圧巻である。

昨年の『ROMA/ローマ』は10部門ノミネートを果たし、動画配信サービスのNetflix作品で史上初のアカデミー賞作品賞への期待がかけられたものの、監督賞、国際長編映画賞、撮影賞の3部門での受賞だった。では今年の『パラサイト 半地下の家族』はどうなのか? 『ROMA/ローマ』と同じように、アカデミー史上初の外国語映画として、作品賞受賞への期待がかけられ、その実現も夢ではない。今年の作品賞ノミネート9本のうち、監督賞でもノミネートされた作品が5本。その中から作品賞が決まる可能性は高く、『パラサイト 半地下の家族』もその1本だからだ。ポン・ジュノ監督の、監督賞受賞も大いに可能性がある。

映画の「トレンド」が最高レベルで保たれた作品

なぜ、アカデミー賞で『パラサイト 半地下の家族』が高い評価を受けるのか。「ジャンルを超えた世界」、「何が起こるか予想しても、その予想を超えた展開となる作劇」など、「体験する映画」としての本質的な面白さを追求しているからで、まだ観ていない人には絶対に詳しく教えたくない感覚が、さらに観ていない人の欲求を高め、その相乗効果が生まれている。このようにエンターテインメントとしての色合いが強いことから、作家性、社会性が重視されるカンヌ国際映画祭でのパルムドール受賞は、ある意味で意外でもあった。

しかしアメリカでのレビューを見ても、たとえばニューヨーク・タイムズでは「この物語は韓国が舞台だが、ロサンゼルスやロンドンに置き換えても十分に成立する。人間の尊厳や階級、生活そのものについての普遍的なテーマを伝える」と、『パラサイト 半地下の家族』の社会性を強調しており、エンタメとしての映画と、社会派テーマを訴える映画。その両方のバランスが最高レベルで保たれた作品だと受け止められているようだ。同じく今年のアカデミー賞作品賞にノミネートされている『ジョーカー』も、やはり社会の中での疎外感や、格差という社会派のテーマを潜ませつつ、エンタメとして成立させており、ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞(最高賞)を受賞し、その後、日本を含めた世界各国で予想以上のヒットへとつながった。『パラサイト 半地下の家族』も『ジョーカー』も、まさに現在の映画の「トレンド」と言ってよさそうだ。

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外国語映画のハンデをどう乗り越えるのか

『パラサイト 半地下の家族』は、昨年10月に北米でわずか3館の限定公開で始まり、その時点で1館あたりの2019年の最高興収を記録した。その後、北米では1月13日時点で2500万ドルという、北米で公開された外国語映画として史上7位にまで登りつめた(数字はBox office mojo参照)。もちろん韓国映画では史上1位。現在も上映が続いており、アカデミー賞でのノミネートによって、さらに数字は伸びることだろう。

また、昨年9月のトロント国際映画祭の『パラサイト 半地下の家族』の上映では、あちこちで大爆笑が起こったかと思えば、次の瞬間には、何が起こるのか会場全体が息をのんだ空気となり、要所で叫び声も上がるなど、とにかく凄まじいばかりの反応だった。こうしたレアな体験が、SNSや口コミで拡散するのは、近年のヒット映画の法則どおり。

『ROMA/ローマ』には動画配信サービスのNetflix作品ということで、作品賞にふさわしいかどうかの論議も起こったが、『パラサイト 半地下の家族』にはその心配はない。ただ外国語映画なので、多くのアカデミー会員も字幕で観るわけで、多少のハンデはあるかもしれない。しかしそのハンデを乗り越える面白さに、アカデミー会員がどう反応するのか。同じアジアということで、日本の映画ファンからも『パラサイト 半地下の家族』の受賞結果に熱い期待が寄せられている。

『パラサイト 半地下の家族』
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文:斉藤博昭

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