掲載期間:2020年1月14日~3月8日

第92回2020年アカデミー賞特集

「ほぼ主演」「そろそろ」の空気も漂う...なぜブラッド・ピットはアカデミー賞の大本命なのか

写真:REX/アフロ

作品賞は大混戦の今年度のアカデミー賞だが、演技部門は本命が見えてきた。もちろん大逆転の可能性は残っているものの、波乱がなさそうな「大本命」を挙げるなら、助演男優賞のブラッド・ピットではないだろうか。

クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で、レオナルド・ディカプリオと初共演。ディカプリオが演じる映画スターの、スタントマン兼運転手のクリフ・ブース役を好演したブラピは、今回オスカーを手にすれば俳優としては初めての栄誉となる。

「ほぼ主演」の役割も助演男優賞受賞への追い風

なぜ、ブラピが揺るぎのない大本命なのか? 助演男優賞候補のライバルを眺めれば、想像がつく。トム・ハンクス、アンソニー・ホプキンス、アル・パチーノ、そしてジョー・ペシ。この4人はすでにオスカーを手にしているのだ。最初の3人は主演男優賞を受賞済みで、トム・ハンクスに至っては2回も栄誉を手にしている。ジョー・ペシは助演男優賞を受賞。すでに主演男優賞を受賞した、いわゆる「名優」が、改めて助演男優賞を受賞するケースは少ないし、この顔ぶれなら、アカデミー会員が心情的にブラピに投票してしまうのは、もはや自然な流れと言えそうだ。

では、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のブラピは、そんなに名演技を披露していたか......と改めて考えると、じつはそうでもなかったような気もする。スクリーンに映っていたのは、あくまでも自然体のブラピ。現段階の自身よりもちょっと若作りしているように感じられたが、それも映画ファンが求めるブラピの姿。主人公のリック・ダルトンに優しいアドバイスを与える男気や、愛犬との笑えるやりとり、ブルース・リーとの対決や終盤のラリっての過激アクションなど、クリフ・ブースの見せ場はどれも軽やかでクール。「こんなブラピを見たかった」という瞬間が何度も立ち現れた。ディカプリオとの出番の長さを比較しても、ほぼ同じくらいで、本来なら主演男優賞にダブルノミネートでもよかったくらい。そんな「ほぼ主演」という役割も、受賞への追い風になっている。

もともと「演技派」というより、「スター」「セレブ」という印象が強いブラッド・ピットは、アカデミー賞にはこれまで3回ノミネートされている。1995年の『12モンキーズ』では危険なキャラで「怪演」をみせて助演男優賞ノミネート。そこからしばらく間が空いて2008年の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』では、老人の姿で生まれて、どんどん若返るという難役をこなして、初の主演男優賞ノミネート。2011年の『マネーボール』では、メジャーリーグのゼネラルマネージャー役で、「カッコいいブラピ」として2度目の主演男優賞ノミネートを果たした。今回は4回目なので、「そろそろ」という空気も漂っている。


ブラピの評価を高めている「もうひとつの顔」

これまではノミネートのみとはいえ、アカデミー賞授賞式でブラピがオスカー像を手にした姿を記憶している人もいるだろう。プロデューサーとしては、すでに作品賞を受賞しているからだ。2013年の『それでも夜は明ける』が作品賞に輝いたとき、ブラピはプロデューサーを代表して「うしろに立っている人、みんなのおかげ」と謙虚に、照れ臭そうにスピーチした。ステージ上に落ちた発表用の封筒を拾うなど好感度もアップさせたが、このプロデューサーとしての能力、そして人望が、ハリウッド内でのブラピの評価を大いに高めているのだ。

ブラッド・ピットの製作会社、プランBエンターテインメントが関わった作品は、『それでも夜は明ける』から、2018年の『バイス』まで、なんと6年連続でアカデミー賞作品賞にノミネートされている。2016年の『ムーンライト』は作品賞受賞も果たした。ブラピは文字どおり「作品をオスカーに近づける」一流プロデューサーなのである。ヒットが難しそうなプロジェクトには、自らのスターバリューを生かして、出演として参加。作品の認知度がアップするように尽力する。テレンス・マリック監督の『ツリー・オブ・ライフ』や、昨年の『アド・アストラ』などがいい例だ。つまりブラピは、映画化したい題材を、広く世に送り出してくれる「救世主」のような存在。もちろんそこにはプロデューサーとしての目利きも必要だが、プランBエンターテインメントの実績をみれば、その才能も明らか。ブラピ自身も、演技と同じくらいプロデュース業に情熱を注いでいる。

写真:ロイター/アフロ

向かうところ敵ナシで迎える授賞式の見どころは

そしてブラピは、記者会見やインタビューではつねに自然体という印象がある。トップスターの中でも、最も「裏オモテ」を感じさせない人である。野心はあるだろうが、スター気取りがないので、業界内でも愛され続けているのだろう。これまで私生活でスキャンダルのネタが出ても、なぜかブラピには逆風があまり吹かない。みんな「ブラピが大好き」なのである。

その自然体が、クリフ・ブース役に乗り移ったので、向かうところ敵ナシ。1月19日に発表されたSAGアワード(全米映画俳優組合賞)で助演男優賞を受賞した際のスピーチでは、自身のシングルライフを自虐ネタに「ティンダー(デート用アプリ)のプロフィールに、このトロフィーを追加しなきゃ」とか、タランティーノの脚フェチを挙げて「マーゴット(・ロビー)の脚と、ダコタ・ファニングの脚に感謝したい」とか、ノリノリだったブラピ。アカデミー賞授賞式で、オスカー像を手にした彼がどんな「自然体」でスピーチをするのか。今年度の授賞式でも、最も大きな見どころになるのは間違いない。

ブラッド・ピット出演
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
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文:斉藤博昭

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アカデミー賞授賞式は2月10日午前10時(日本時間)

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