掲載期間:2020年1月14日~3月8日

第92回2020年アカデミー賞特集

賛否両論のアメコミ映画『ジョーカー』が作品賞にノミネートされた背景

今年のアカデミー賞で、何が作品賞に輝くのか? 映画マニアにとっては興味津々の話題だが、日本の一般の映画ファンにとっては、そんなに関心がないかもしれない。「アカデミー賞作品賞=観客に支持された作品」というわけではないからだ。たとえば昨年、日本でも大ヒットを記録し、明らかに観客に愛された『ボヘミアン・ラプソディ』は、作品賞への「ノミネート」が限界であり、さすがに受賞までは至らなかった。もし『ボヘミアン・ラプソディ』が作品賞に輝いていたら、それはそれで「アカデミー賞らしくない」と言われてしまっただろうし、難しいところである。賞の結果が、一般レベルの判断基準からちょっとズレてしまうのは、アカデミー賞に限ったことではない。しかし、映画ファンがアカデミー賞への関心を薄れさせる、ひとつの要因になっているのも確かだ。

Getty Images

賛否両論の作品が賞レースで高く評価された背景

今回の『ジョーカー』は満を持してのノミネートであるが、タイトルになっている有名キャラクターが堂々と登場するわけではなく、従来の「アメコミの映画化」という枠には収まりきらない作品でもある。昨年の『ブラックパンサー』のように、誰もが入り込みやすいエンタメ的な作りではない。今年度の賞レースでは、そうした「複雑な」部分が高く評価されたとも言えそう。アメコミ作品として初の三大映画祭グランプリ(ヴェネチア国際映画祭金獅子賞)を受賞したことで、エンタメではなく、アート作品、あるいは社会派作品としての側面も強く認識された。アカデミー賞向きの作品として、その後の賞レースの道を突き進んできたのだ。

『ジョーカー』の主人公、アーサー・フリックが体現するのは、「格差社会での不平等」や、「ためこんだ怒りを爆発させての犯罪」、「極端な思想に扇動される人々」など、どの国でも問題になっているシリアスなトピック。世界の現実を浮き彫りにした点も、高く評価されている。大ヒットした作品にもかかわらず、「衝撃を受けた」、「生理的にあまり好きではない」と賛否両論があるのも、むしろ賞レースを争う作品らしい。しかし、その賛否もねじふせるかのように、有無を言わさぬインパクトを残すのは、アーサー役、ホアキン・フェニックスの演技で、鬼気迫る熱演というだけでなく、観る者のイマジネーションを刺激する奥深さが、作品を成功へと導いた。演技の部分への賞賛も、昨年の作品賞でいえば、同じアメコミ作品の『ブラックパンサー』と違って、『ボヘミアン・ラプソディ』に似ている。

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ホアキン・フェニックス受賞なら異例のパターンか

『ジョーカー』は作品賞、監督賞、ホアキン・フェニックスの主演男優賞など、今年度最多となる11部門のノミネートを達成した。最多ノミネートだから、作品賞で最有力というわけでもないのだが、「受賞の可能性がある」位置にはつけている。ノミネート最多で、興行的にも成功を収めた作品では、過去にも『タイタニック』(1997年)、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003年)などが作品賞に輝いている。

もし、『ジョーカー』が作品賞を受賞することになれば、ちょっとしたサプライズだが、観客に強く支持された作品の久しぶりの快挙ということで、近年のアカデミー賞としては大きな話題になるだろう。そしてホアキン・フェニックスは主演男優賞に最も近い位置につけているが、受賞すればジョーカー役としてはヒース・レジャーに続いて2回目。同じ役がオスカーを2つ獲得するという、異例のパターンとなる。

ホアキン・フェニックス出演『ジョーカー』
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文:斉藤博昭

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