掲載期間:2021年3月16日~5月9日

第93回2021年アカデミー賞特集

必見モキュ&ドキュメンタリー『続・ボラット』&『タイム』アマプラ配信中! 対照的なアカデミー賞候補作を今すぐ自宅で観よう

BANGER!!!

『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』©Courtesy of Amazon Studios/『タイム』Amazon Prime Videoにて独占配信中

アカデミー賞候補作を今すぐアマプラで!

2020年以上に配信作品の躍進が目立つ第93回アカデミー賞だが、いますぐ観られるノミネート作品がAmazon Prime Videoで配信中だ。すでに『あの夜、マイアミで』と『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』は紹介済みなので、今回は、おバカなモキュメンタリーのはずが国の恥部を暴いてしまった『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』(主演女優賞・脚色賞)と、ごく私的な記録が切実な社会問題をあぶり出すドキュメンタリー『タイム』(長編ドキュメンタリー賞)という、対象的な2作品を紹介したい。

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あのデタラメ男が頼んでないのに帰ってきた!『続・ボラット』

いまやアカデミー賞候補になるほど演技派俳優サシャ・バロン・コーエンが、架空のカザフスタン人に扮し奇行を繰り返す『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2006年)は、世界中の人々を失笑させたおバカ・モキュメンタリーの金字塔だ。しかし、主人公ボラットの常軌を逸した言動はアメリカにくすぶる欺瞞を暴き出すことが目的であり、彼の調子に乗せられてつい本音を口にしてしまう人々の姿は衝(笑)撃的だった。

そんなボラットが、なぜか14年ぶりに復活したのが『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』。前作で祖国に泥を塗ったとして終身刑となっていたボラットは、カザフの大統領いわく"偉大な指導者"ことドナルド・トランプ......ではなく副大統領ペンス(当時)に貢物(同国の文化大使であるサルのジョニー)を届けて媚びを売るべく、再びアメリカに飛ぶのだった。

度を越した下品ぶりと不謹慎ぶりがウリだった前作に、ひどすぎる性差別描写などを加えてさらにパワーアップ(?)している本作。ボラット自身がアメリカで有名になりすぎているのでヤラセ感も大幅にアップしているが、意外とそのへんはどうでもいい。とにかく秀逸なのは中盤の白人至上主義者との共同生活シーン(コロナ禍の撮影で色々と大変だったらしい)と、終盤のルディ・ジュリアーニの"最低行為"をカメラに収めたところだ。

当時トランプの個人弁護士だったジュリアーニは、アカデミー賞主演女優賞候補となったマリア・バカローヴァ演じるトゥーターの"取材"を受けるシーンで、二人きりになった途端に自分のズボン(股間)に手を突っ込むのである! 本作は米大統領選の前に配信されたが、この痴態が結果に影響した......かどうかは実際に本編を観てご確認いただきたい(※まじでキモいので要注意)。

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歪んだ刑法を"愛"が凌駕する『タイム』

第36回サンダンス映画祭で米国ドキュメンタリー監督賞を受賞した『タイム』は、米ヴァージニア州で獄中の夫の帰りを待ち続ける家族を追った作品。その題材からとてもパーソナルな内容のように思えるが、いまもアメリカに残る"見過ごされがちな奴隷制"をある家族の例から浮き彫りにする、社会派かつ愛にあふれたドキュメンタリーである。

本作が映し出すのは、事業に失敗し銀行強盗という極端な選択をしてしまった夫婦と子どもたちが、約20年にわたって闘い続ける姿だ。妻であるフォックス・リッチは司法取引により3年で釈放されるも、夫ロバートは懲役60年を言い渡され、保護観察も仮釈放も、執行猶予もつかなかった(初犯、負傷者なし)。この異常な量刑から、"タイム(時間)"というシンプルなタイトルに様々な意味が込められていることがわかるが、フォックスは悲嘆に暮れて泣きながら過ごしていたわけではない。

彼女は新たな事業を起こし6人の子どもたちを育て上げ、同じく偏向したシステムによって"終わりのない償い"を課された人々の家族を支える活動を行い、長年にわたって事件の再審査を依頼し続けた。ドキュメンタリーとしては演出過多と捉えられかねないカットもあるが、それらが一家の姿を美化してしまうようなことはない。たびたび挿入されるスマホ撮影の古い映像からは、ブレることのない大きな"愛"と辛抱強く耐えてきた年月、そして彼女たちの"強度"が伝わってくる。

不当な量刑を課された者はもちろんだが、"残された側"の家族たちの姿を見せることで、貧困層が押し付けられている厳しい現実=負の連鎖を、より強く実感することができる。息子のジャスタス(フォックスが逮捕時に妊娠していた双子の一人)が「社会ではイメージがすべて」と語るが、実際、親が刑務所行きになった子どもたちの多くが道を誤り犯罪に手を染めてしまうのだ。しかし、フォックスが「成功することが最高の復讐」と気丈に振る舞う様子からも分かるように、本作はその逆境を跳ね返した家族を紹介することでステレオタイプを拒絶し、あくまでポジティブな可能性を示しているのが印象的だった。

もちろん夫婦は無罪ではないし、説明的な描写を避けているので分かりづらいかもしれないが、言うまでもなく「犯罪行為を棚に上げて......」といった批判は的外れである。このあたりの理解を深めるためにも、ぜひ併せてNetflixオリジナルドキュメンタリー『13th ー憲法修正第13条ー』(2016年)などを観て、米司法制度の問題点や制度的人種差別について予復習することをおすすめする。

『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』『タイム』はAmazon Prime Videoで独占配信中

【アカデミー賞2021】 ノミネート作を徹底解説!(外部サイト)

文:BANGER!!!

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