掲載期間:2019年1月17日~3月20日

第91回2019年アカデミー賞特集

『万引き家族』アカデミー賞候補入りは「予想どおり」これだけの理由

 今年の外国語映画賞に、日本映画として10年ぶりに『万引き家族』がノミネートを果たした。とはいえ、これは大方の予想どおり。あくまでも「通過点」であり、10年前にノミネートから受賞へとつながった『おくりびと』以来、日本作品としての快挙に早くも期待が高まっている。ちなみにアカデミー賞の歴史をさかのぼると、1950年代に外国語映画に贈られる「名誉賞」を日本映画が3度受賞(『羅生門』『地獄門』『宮本武蔵』)。1956年、外国語映画賞の部門ができてからは、過去12本の日本映画がノミネートされ、『おくりびと』のみが受賞に到達している。

(C) 2018『万引き家族』 製作委員会

快挙の連続で落選の可能性はほぼゼロ

 『万引き家族』のノミネートが「予想どおり」なのは、これまでの賞レースでの実績が万全だったから。昨年5月のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールに輝いたことで、その後の賞でも大きく注目される、という流れは「常識」になっている。同じく世界3大映画祭のヴェネチアで最高賞の金獅子賞を受賞した『ROMA/ローマ』も、今回のアカデミー賞で作品賞、外国語映画賞など10部門でノミネートされた。『万引き家族』の場合、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、LA映画批評家協会賞などで外国語映画賞にノミネート。ナショナル・ボード・オブ・レビューでは同賞を受賞。ボストン・オンライン批評家賞では、外国語部門ではなく全映画の中の作品賞に輝くという快挙の連続。カンヌのパルム・ドール作品は過去10年で半数の5本がアカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされたが、『万引き家族』は他の前哨戦の賞でも申し分ない実績を重ね、今回、落選の可能性がほぼゼロに近かったのである。

 では、なぜこれほどまでに『万引き家族』が支持を集めたのか? 最大の要因は、是枝裕和監督への世界からの評価がピークに達したから、と考えられる。映画監督デビュー作の『幻の光』から世界の映画祭では注目されてきた是枝監督だが、2013年、カンヌで審査員賞を受賞した『そして父になる』が230の国と地域で上映され、一般レベルでの認知度も上昇。『リトル・ミス・サンシャイン』などのポール・ダノが「ぜひ出演させて」とラブコールを送り、ニコール・キッドマンら大スターも是枝作品への愛を口にするようになった。世界中の俳優にとって「あこがれの監督」の地位が確立されていた。

『万引き家族』でひとつの境地に達した是枝演出

 そんな是枝監督にとっても、『万引き家族』は、よりグローバルな支持を集める作品となったのだ。前作の『三度目の殺人』は、やや作家性が強いミステリーで、その前の『海よりもまだ深く』は監督自身の家族への思いが溢れていたりもしたが、『万引き家族』は、格差社会や、血のつながりだけではない家族関係という多様性など、日本を舞台にしながら、どの国の観客も身近に感じる社会問題を浮き彫りにした。社会派で、政治的メッセージも感じさせつつ、カンヌの授賞式でも審査委員長のケイト・ブランシェットが安藤サクラの演技を絶賛したように、是枝監督らしいキャストの演技を「引き出す」マジックが冴え、エンタテインメントとしても飽きせない。それゆえに日本でも『万引き家族』が大ヒットしたわけだが、ひとつの境地に達した是枝演出が、世界中の観客に愛されたのではないか。カンヌなどで評価された作家性や社会性に、誰もが入りやすい普遍性、さらに「その国らしさ」も備えたことで、アカデミー賞外国語映画賞の候補にふさわしい作品となったのである。

(C) 2016フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ

最大のライバルの状況が『万引き家族』に有利にはたらく?

 気になるのは、受賞の可能性だ。最大のライバルと思われるのは、メキシコのアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』で、同作は作品賞にもノミネートされており、今年のアカデミー賞でも「主役」の一本である。前哨戦の結果からも、『ROMA/ローマ』が作品賞を受賞する可能性は低くない。しかし、この状況が『万引き家族』に有利にはたらくかもしれない。「『ROMA/ローマ』が作品賞を取るなら、外国語映画賞は他の作品で」という投票者の心理が動くことも考えられる。もうひとつのライバルが、監督賞や撮影賞にもノミネートされている、ポーランドの『COLD WAR あの歌、2つの心』だが、同作のパヴェウ・パヴリコフスキ監督は4年前の『イーダ』で、すでにアカデミー賞外国語映画賞を受賞済みである。ただし残りの2作、レバノンの『カペナウム(原題)』、ドイツの『ネバー・ルック・アウェイ(原題)』も『万引き家族』に劣らない高い評価を得ており、この外国語映画賞は大穴にもたらされるケースもある部門(『おくりびと』が、そのパターンだった!)なので、最後まで予測不能。でも、だからこそ授賞式へのワクワク感も高まるわけで、是枝監督が壇上でスピーチをする姿を想像しながら、2月24日(日本時間25日)の授賞式を待ちたい。

文:斉藤博昭

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